道成寺

道成寺にお参りしました。
大宝元年(701)に創建された和歌山県最古の寺で、安珍と清姫の物語で有名です。

今回は道成寺までの輪行旅です。JR御坊で自転車を組み立てて、そこから道成寺まで走りました。
御坊から道成寺まではたったの2キロメートルです。
和歌山から道成寺まで来る列車は少ないですが、和歌山~御坊は1時間に2本ほどあるので、御坊~道成寺は自転車が最速だと思います。
寺の下には数件のお土産物屋があって、続々と観光バスが入ってきます。道成寺は人気があるようです。自転車はお土産物屋さんに置かせていただきました。

道成寺へは62段の石段を上ります。
道成寺には7つの不思議があって、この石段は不思議その一です。

石段の左右の土手が下から見ると逆ハの字になっていて、遠近法によって下から見ると近くに、上から見ると長く見えるといいます。
お参りに来られた人が歩きやすいようにおもてなしの心が込められているそうです。

次の不思議は仁王門です。
本堂、御本尊、門、参道が一直線に配置されており、仏様が人々を見守ってくださるようにとの願いが込められているそうです。

確かに仁王門のまっすぐ前に本堂があります。
本堂は南北朝時代に建立されたと考えられており、昭和60年から平成3年(1985〜1991)にかけて改修工事が行われました。
本尊は千手観音菩薩で国宝に指定されています。宝物殿で拝見させていただきました。

次の不思議は三重塔です。
江戸時代に三重塔を再建する際、心柱に使える木が見つかりませんでした。ようやく探し当てた木は妙見神社の御神木のヒノキでした。住職が妙見神社に木を使わせてほしいとお願いしたところ、受け入れてもらうことができ、三重塔が再建されたといいます。
文字通り、神仏和合のお導きが示されているそうです。

三重塔の前には二代目鐘楼跡があります。
初代の鐘楼は安珍と清姫の事件で燃え尽きました。
二代目鐘楼が400年後の正平14年(1359)に作られたのですが、秀吉の紀州攻めのときに没収されてしまい、その後、道成寺は鐘のない寺になってしまいました。
道成寺には鐘を持たせない! 清姫の怨念でしょうか。
※ 二代目の鐘は現在京都の妙満寺にあります。

不思議その4は相桜です。
清姫が鐘楼ごと安珍を焼き殺したといいますが、その鐘楼はここにあったそうです。
発掘調査で焼けた土が出土したそうです。

不思議5、6、7は本堂の裏手にあります。
不思議 5 は「御開帳の不思議」。
道成寺には二体の千手観音が安置され、一体は宝物館で見られる国宝の千手観音。もう一体は33年毎にご開帳される秘仏の千手観音です。
次の御開帳は令和20年(2038)。大切な方と拝むと、次の御開帳に一緒にお参りできるとのことですが、まだだいぶ先ですね。
不思議 6 は「娘道成寺の人気」です。
毎年春に、道成寺物の奉納公演が行われており、この人気は千手観音様がわれわれに差し伸べてくださっている御手のひとつだそうです。
不思議 7 は「無き鐘ひびく道成寺」です。
道成寺に鐘はないけれど、初代の鐘は『道成寺縁起』の絵ときで、二代目の鐘は「道成寺物」の舞台で鳴り響いているということでした。

最後に宝仏殿で多数の仏像を拝観させてもらいました。
千手観音の両脇におられる日光菩薩、月光菩薩も国宝で、その他の仏像も重要文化財など歴史のある貴重なものでした。
道成寺縁起の絵ときをしていただきました。
巻物をくるくる回しながら、語る言葉と絵によってその場の情景が表現される楽しいものでした。
安珍と清姫の物語は、清姫による安珍を殺すストーカー事件だというのが印象に残りました。たしかに、そういう解釈もできるんだと思います。
道成寺に来たら絶対宝仏館に入るべきだと思います。

絵ときを聞いて境内の安珍塚を見ると、捻れたような木の感じが清姫の情念を思わせました。

道成寺から歩いて5分のところに蛇塚があります。
ヘビに化身した清姫は安珍を焼き殺した時に自分も焼け死んだとされていますが、清姫はそこでは死ななかったというのです。
安珍を殺した清姫は我に返ると、やってしまったこと、蛇になってしまった自分の恐ろしさから日高川に身を投げて死んだ。そして、この蛇塚は、清姫を埋葬したものだそうです。

道成寺から御坊駅へ戻る途中、奇抜な像を見つけました。
道成寺を創建した宮子姫(髪長姫)の像です。
髪の毛のなかった少女が、海で拾った小さな観音様を拝むうちに、毛が伸び髪長姫と呼ばれる美しい姫になりました。このことが京都に伝わり、宮子姫と名づけられ、文武天皇の夫人となりました。
宮子姫は願いをかなえてくれた観音様と地元に残る両親のために道成寺を建立したといいます。

道成寺が創建され、有名になったのは女性の力が大きいですね。
そして宝仏館に残る仏像などを見て、絵ときをしてもらうと、道成寺がたくさんの人々の信仰を集めてきたことが感じられました。