奈良・十輪院

十輪院を訪問しました。
本堂が国宝になっているのが訪問した理由でしたが、本堂内に石仏龕というものがあることは知りませんでした。
建屋の中でこういうものを見るのは初めてで、驚きました。

尼僧の方が次のように説明をしてくれました。

  • 最初に石のお地蔵様(地蔵菩薩)が造られた。
  • 次に、お地蔵様を風雨から守るために石の逗子が造られ、お地蔵様はその中に収められた。逗子にはお地蔵様の向かって左に釈迦如来、右に弥勒菩薩が彫られている。
  • 本堂は逗子ができたあとに建てられた。
  • 本堂は、おまつりするお地蔵様を上から見下ろさないように、低く作られている。
  • このお地蔵様は錫杖を持っていない時代に造られたもので、右手はおろして、手のひらをこちらに向けている。これは与願といって、願いを与える、願いを叶えてあげますという意味がある。
  • お地蔵様は裸足で立っておられる。
    このお地蔵様が造られた頃は、お地蔵様の所へ私たちが行って、願い事をしていた。時代が下がると、お地蔵様は全ての人を救いたいと思われ、お地蔵様のところにお参りに来られない方や具合が悪い方を救うために、お地蔵様が出てこられるようになった。
    そうして、杖を持たれ、ぞうりを履くように変わっていった。
  • お地蔵様や逗子は着色されていた。極彩色ではなかったと考えている。

確かに今も少し色が残っています。最初はどんな色だったのか。当時の色が再現できたら、石仏龕の印象も変わるでしょう。
また、お地蔵様の形態が時代によって変わるということも勉強になりました。

本堂内には他にもいろいろなものが展示されています。
理源大師坐像には室町時代の作務衣が埋め込まれていて、生々しい印象を受けました。
奈良時代に書かれたお経はすばらしく達筆です。昔も字が上手な人がいたんだ、と感心しました。

十輪院には派手さはありませんが、ステキなところでした。