南都七大寺の一つである大安寺にお参りしました。
大安寺は観光客で賑わう奈良公園から約2キロ、バスで約10分の距離にあります。

大安寺の歴史を伝える説明板があります。
聖徳太子が創建した熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)に始まり、百済大寺、高市大寺、大官大寺と、飛鳥から藤原京へと都が移るたびに、場所と名前が変えていきました。そして、平城京に移ったときに大安寺となりました。
当時は多数の僧侶が仏教を研究し、修行する巨大な寺院だったようです。例えるならば、現代の東京大学のような存在だったのかもしれません。
大安寺は現在、癌封じの寺として信仰を集めています。
お参りしたときはちょうどご祈祷の時間で、祈祷を受ける方々が本堂の中に入っていかれました。

大安寺のホームページには、次のことが記されていました。
大安寺は国家所属の官寺であったため、「国家の安泰と人々の安寧を祈る」役割を担っていた。
医学が未発達であった時代、病は今以上に恐ろしい存在だった。
大安寺は悪病、難病、人々を苦しめる病を封じる祈りの場でもあった。
そうした背景から、現代の難病の最たるものである「癌」を封じる寺として認識されていった。
毎年1月23日には「光仁会(こうにんえ)」というお祭りが行われ、竹に入れた笹酒が振る舞われ、癌封じの祈祷などが行われます。また、6月23日には「竹供養」というお祭りがあり、このときも笹酒が振る舞われ、癌封じの祈祷が行われます。
境内に「いのちの小径」がありました。

小径を歩いていくと、乳房の形をした石像が建っていました。これは美流孔塚(みるくづか)といい、実際に乳癌を克服された信者様が建立されたそうです。
大安寺のご祈祷によって、がんが治癒したり、気持ちが癒やされたりするのであれば、すばらしいことだと感じました。

大安寺の宝物殿にもお邪魔させていただきました。
他に見学者がおらず、たった一人で天平時代に作られた9体の貴重な仏様を拝見することができました。
これほど貴重な品々を、たった一人で、間近に見ることができたのは、本当に贅沢な時間でした。
宝物殿の壁には奈良時代の大安寺を再現した絵が描かれていました。
大安寺は巨大な寺でした。金堂を取り囲む僧坊。2基の七重塔が建っていました。

七重塔は現在では失われ、土台だけが残っています。

また、バス停から大安寺への道沿いにも、かつての大安寺の境内だったという空き地が広がっていました。
在りし日の大安寺は、想像以上に広大な寺院だったのだと改めて感じました。
規模は小さくなったけれど、篤い信仰を集める大安寺の静かな佇まいは、とても魅力的でした。