神戸・敏馬神社

神戸市灘区に鎮座する敏馬神社(みぬめ)は神功皇后と深い関わりを持つ神社です。
主祭神は素戔嗚命。
配祀神は天照皇大神、熊野産大神、稲倉魂神です。

『摂津風土記』の逸文には次のようなエピソードがあります。

  • 「美奴売(みぬめ)」は能勢の美奴売(みぬめ)山にいる神の名である。
  • むかし、神功皇后が新羅へ遠征したとき、神崎の地に神々を集めて、勝利を祈願した。
  • 美奴売の神もやってきて、「我が山から杉を伐って船を造りなさい。この船に乗れば勝利間違いなし」と告げた。
  • 言葉通りにすると新羅に勝つことができた。
  • 新羅からの帰路、この沖まで来ると、船が動かなくなった。
  • 占ってみると、「神の御心によるものである(ここに留まりたいのだ)」ということがわかったので、美奴売の神をお祀りし、船を奉納した。
  • そして、この地を美奴売と呼ぶようになった。

敏馬神社の古い歴史を伺わせるエピソードです。

奈良時代には、この地は「敏馬の浦」と呼ばれる岬でした。
現在は敏馬神社のすぐ前を国道43号線が走り、海岸線から500mほど離れていますが、当時は神社の前に海が広がっていました。
敏馬神社の社殿は国道から、一段高いところにあるので、これが岬だった名残でしょう。

「敏馬の浦」は摂津国の交通の要所ということもあり、敏馬を詠んだ歌が『万葉集』に収められています。
その後も「みぬめ」と「見ぬ眼」を掛詞にして多くの和歌が詠まれました。
境内にはそれらの歌が紹介されています。

このような敏馬神社ですが、「縁切りの神様」としても知られています。しかも絶大なパワーがあるようです。

縁切りのパワースポットは、弥都波能売神(みずはのめのかみ)をお祀りする境内社「水神社」の裏にある「奥の宮」です。ご祭神は伊邪那岐大神と伊邪那美大神の二柱。悪縁を絶ち良縁を結び家庭和平にご利益があるとのことです。

ところで、「みぬめ」という言葉は、「海藻」を表す言葉でもあるそうです。
六甲山から流れ出る、きれいで栄養に富んだ水によって、豊かな海藻が育っていました。

柿本人麻呂の歌碑には次の歌が刻まれています。

玉藻刈る 敏馬を過ぎて 夏草の 野島の崎に 船近づきぬ
(美しい藻を刈る敏馬を過ぎて、夏草の茂る野島の崎に船は近づいた)

夏の明るい日差しを浴びた光景が思い浮かびます。

摂津の西端に位置する敏馬神社・敏馬の浦。当時の旅人たちにとって、とても美しく、印象的な場所だったのでしょう。