日本酒の発祥・庭田神社

兵庫県宍粟市一宮町に鎮座している庭田神社は、第13代成務天皇14年(131年)に創建されたという非常に古い歴史を持つ神社です。
ご祭神は事代主命です。

境内にある由緒記には「大国主命が天乃日槍命と国土経営を争い、伊和の地で最後の交渉を終えられた後、大事業達成に力を合わせた神々を集めて、酒を醸して宴を催した」という記述がありました。
歴史が古いというだけではなく、この庭田神社は日本酒発祥の神社としても知られています。

鳥居をくぐって境内に入ると、そこはうっそうとした森でした。なかでもケヤキの大木は高さが25メートル、幹周り5.4メートル、樹齢600年という巨木です。

境内の外は住宅や田んぼになっていて、高い木はありません。
ぽつんと庭田神社の森があるのですが、これだけの木々が生え育っているということは、この森が長い年月をかけて守られ、育まれてきたことを物語っています。

現在の社殿は明治4年(1870)に再建されたもので、神功皇后の時代にも社殿が造営されていたと伝えられています。

庭田神社が日本酒発祥の地といわれる根拠は、播磨風土記の『宍粟の郡(しそうのこおり)』の条にあります。

庭音の村
本の名は庭酒なり。大神の御糧、枯れて生えき。酒を醸ましめて、庭酒に献りて宴しき。故、庭酒の村と曰ひき。今の人、庭音の村と云ふ。
播磨風土記 「宍粟の郡」 より

現代語に訳すと、
  庭音(にわと)の村の元の名は庭酒(にわき)だった。
  大神の干し飯にかび(麹)がはえたので酒を醸造して、「庭酒」として献上して宴を開いた。

この「庭酒」を醸し、宴を催した場が庭田神社とされています。
蒸したコメに空気中の麹菌が付着・繁殖することで糖化が始まり、酵母によってアルコール発酵が進みます。
同様の現象が大国主命のコメにも起こり、酒ができたので、神々が宴を開いたのかもしれません。

裏参道から外に出たところに湧き水「ぬくいの泉」があります。清らかな水があったからこそ酒造りができたのでしょう。

ぬくいの泉のそばにあった説明板に、宍粟市が「日本酒発祥の地 宍粟市日本酒文化の普及の促進に関する条例」を制定したことが記されていました。

この条例の第1条は「日本酒による乾杯等日本酒文化の普及の促進を通じ、日本酒発祥の地としての宍粟市の歴史・文化を後世に継承するとともに、郷土愛の醸成を図り、地域の振興及び発展に寄与することを目的とする」です。
日本酒を中心に、地域のアイデンティティを育んでいこうという取り組みが感じられます。

庭田神社で採取した酵母菌と麹菌を使って醸造した「庭酒(にわざけ)」という酒も造られています。

帰途につくために鳥居を出てみると、緑の田園と両側から迫る山が見えました。
もしかしたら、古代の人々もこの光景を目にして豊かさを感じたのではないか、と思いました。