備前市日生にあるBIZEN中南米美術館を訪問しました。
なぜ備前に中南米の美術館があるのか?
どういう美術館だろうか?
と思いながら訪問させていただいたのですが、想像を超えてすばらしい美術館でした。
設立経緯として次の説明がありました。
- 岡山県備前市日生で漁網の製造、販売を営んでいた故森下誠一氏のコレクション寄贈により1975年に開館
- 森下氏は商用で南米を訪れた際に古代アメリカ文化の遺物に触れ、収集を行った。
- 収集された遺物は専門家の鑑定により学術上、美術史上、極めて貴重なものであることが明らかになった。
- そこで一般公開を決意。美術館が設立された(1975年)。
- 本美術館は中南米考古学に特化した日本唯一の美術館である。
- 美術館の外観は備前焼の陶板で覆われており、外観も美術品である。
美術館は40年以上の歴史がありました。
現在、「おしゃべりな土器たち」という特別展が開催されているのですが、展示物について館長の森下矢須之氏から説明をしていただきました。
森下矢須之氏は美術館を設立した森下誠一氏の孫で、メキシコの大学で学んだといわれていました。収集されたコレクションについては東京大学などと共同で研究がなされたりするそうです。
中南米の考古学、古代アメリカ文明は6000年前にエクアドルの海辺で始まったということで、紀元前4000年から16世紀にスペインによってインカ帝国、アステカ帝国が滅ぼされる間の美術品、出土品がコレクションされています。
学校の勉強から、中南米の歴史というとインカ帝国やアステカ帝国を思い浮かべるのですが、インカ帝国、アステカ帝国ともに建国から滅亡まで100年程度の若い国で、もっと多くの歴史が古い国、文明があったようです。
古代中南米文明はメキシコあたりのメソアメリカ文明、南米のアンデス文明、その間の中間領域の3地域に分かれ、それぞれの地域で多くの国、文化が生まれました。
1000年、2000年と続いた国もあったようです。
展示品
色々なデザインの土器があります。動物、人、神様の形。色も茶色、黒の単色のものから色鮮やかな多色のものもあります。
こういった違いはそれぞれの国、文化の違いから来ているそうです。
紀元前1200年のボトルがあります。面白い形をしています。もっと単純な形のほうが作りやすいと思いますが、こういう形にしなければいけない理由があったのでしょう。
ジャガーやサルなどの動物。創造力があふれています。
かわいらしい土器もあります。それぞれの文化で造られる形が全く違っているようです。
マヤ文字
中南米文明は文字がなかったと思っていたのですが、紀元3〜10世紀に成立したマヤ文字というものがあり、現在解読が進められているそうです。マヤ文字は表意文字と表音文字から成り立つということなので、日本語に似ているのかもしれません。
ドネーションしたら自分の名前のマヤ文字名と記念品をいただけ、バーチャルマヤ村・ヤシュ・ナーブの村人になれるそうです。(https://quetzalcoatl.at.webry.info/202101/article_2.html)
カカオ
マヤの王族はカカオを飲んで長寿だったそうです。
カカオを入れたというカップは巨大。中ジョッキよりも大きい!そのカップで、一日何十杯も飲んだといいます。
よくそんなに飲めたと、そこに感心してしまいました。
マヤ文字があったので王様達の寿命わかり、60歳は当たり前、80歳、90歳の長寿もたくさんいたそうです。当時の貧弱な医学を考えると、長寿はカカオのポリフェノール効果しか考えられないとか。
ポリフェノール(抗酸化物質)は次の効果があるそうです。
・血圧低下
・動脈硬化予防
・老化防止
マヤの王様みたいにカカオを飲むことはできませんが、カカオを多く含んだチョコレートを食べるのが良さそうです。
笛吹ボトル
展示物に笛吹ボトルというのがあります。
3000年前にアメリカ大陸最古の笛が作られた。それも人が吹く笛ではなく、乙女が咀嚼したトウモロコシで作った聖なる酒チチャによって笛の音が奏でられるとか。
1室タイプはチチャがボトルに入れられたとき、2室タイプはチチャが入ったボトルを傾けたときに音が鳴る(笛が吹かれる)そうです。
意味がわかりません。
不思議に思っていたら、森下館長が笛吹を実演してくれました。
古代アンデスの笛吹ボトルはインカ帝国の滅亡と同時に途絶えました。
しかし、BIZEN中南米美術館が東京大学、岡山県立大学の協力を得て実施した「古代アンデス笛吹ボトル再現プロジェクト」により、備前焼作家・森敏彰氏により備前焼で蘇りました。
備前焼笛吹ペッカリー(笛吹ボトル)に水を入れ、ボトルを傾けると鳥の鳴き声が聞こえます。傾け方を変えると音色、音の大きさが変わります。すごいです!
YouTubeに実演がアップされています。https://youtu.be/kkPQRHXXWos
なぜ音が出るのか、構造を説明してくれましたが、理解できませんでした。
古代アンデスの人が、この笛吹ボトルを発明したというのが驚きです。最初は偶然だったのかもしれませんが、時代とともに1室から2室、音を大きくするための工夫がされるなど。それも驚きです。
蘇った笛吹ペッカリーは備前焼。備前焼は表面に微細な凹凸、気孔に空気が含まれ、お酒がマイルドでおいしくなるそうです。この備前焼笛吹ペッカリーは販売されています。
今回、BIZEN中南米美術館でたくさんの展示物を見るとともに、森下館長から説明や笛吹ボトルの実演をしていただくことができました。
東洋、ヨーローッパとは全く異なる文化、歴史に触れることができて、本当に良かったと思いました。