孝徳天皇(在位645~654年)の勅願寺として開基された石峯寺は延命地蔵菩薩を御本尊とする真言宗のお寺です。
法道仙人によって開基されたとされ、龍神伝説が伝えられています。
インドから日本に紫雲に乗ってやってきた法道仙人が淡河に飛来してきました。
山の岩場に登った仙人が周りを見渡していると、山がおおいに震動し、龍神が現れます。
龍神は「日本に仏教隆盛の兆しがある。沙伽羅竜王の娘が奉持する黄金の延命地蔵菩薩を持って国々を巡っていた」と、仙人に延命地蔵菩薩渡しました。
仙人は孝徳天皇にこれを奉じ、寺を開きました。
ときは白雉2年(651)。今から1400年近く前のことでした。
寺の正面には大きな仁王門があり、本堂まで真っ直ぐ道が続いています。
仁王様、お二人は迫力のあるお顔をしていました。
本堂はどっしりした感じの大きな建物です。
石峯寺では薬師堂と三重塔が国の重要文化財に指定されています。
薬師堂
薬師堂は(別名:瑠璃殿)は天平19年(747)の建立です。
その当時、天然痘が大流行していたといいます。天然痘という厄災を鎮めるために薬師如来にお願いしたということだと思います。
薬師堂の説明板には「聖武天皇が七体の薬師如来像の制作を命じ、光明皇后が十七巻の薬師経を浄写され、悪疫消除を祈願して各地域に聖舎を立てて祭司された。石峯寺の薬師如来は行基菩薩によって開眼された」とありました。
石峯寺の存在が大きかったことがうかがえます。
三重塔
三重塔は弘仁14年(823)に嵯峨天皇の勅願で建立されたといいます。
現在の三重塔は室町時代に再建されたもので、24.4メートルの高さがあり、兵庫県では一、二位を争う高さとのことです。
石峯寺88ヶ所巡り
「石峯寺88ヶ所巡り」というのがありました。88体の如来様や菩薩様が配置された遊歩道になっています。
ものは試しということで歩いてみました。
一番目は釈迦如来、二番目は阿弥陀如来でした。
大きな木の根と一体化した薬師如来様(22番、23番)がおられました。
岩をくり抜いた中におられる菩薩様や高い木に囲まれた波切不動明王様など。神秘的な雰囲気がありました。
歴代天皇の崇敬も篤かった石峯寺は中世にはおおいに隆盛しました。東西2里の領地を持ち、70を超える塔頭寺院があったといわれます。
嘉吉の乱、織田家の播磨侵攻などによって衰退した後、明石藩主、三代将軍・家光の保護を経て、現在は十輪院と竹林寺と極楽寺が残っています。
今回、石峯寺を訪問して一番感じたのは静けさでした。
テレビの音、通勤途中で聞こえる音、職場での話し声など、いつも音が聞こえます。
しかし、ここは音が全く聞こえませんでした。
こんなに静かな空間があるのだ。そして、昔々はこんなに静かだったんだろうなと思いました。